バスキュラーアクセスとは

バスキュラーアクセス(シャント)とは、血液透析療法で血液を取り出す場所を指します。

上肢(じょうし)の動脈と静脈を繋いだ部分にバスキュラーアクセスを作成し血管を介して血液を一度体外におちり出し、ダイアライザー(透析機)という装置の中を通し血液を濾過したの
ち、再び体内に戻します。

 
血管透析では150〜250mL /分 の血液をダイアライザー(透析機)に循環させることが必要です。

 
上肢には静脈と動脈が流れていますが、静脈は50mL/分 程度の血流しか流れおらず透析治療を行うために必要な血流を確保することができません。
 
一方、動脈は十分な血流を取ることでできますが、皮膚表面から深くを走行することから止血困難な状態や神経損傷など合併症のリスクが高くなります。
 
これらを解決するために静脈と動脈を繋いだバスキュラーアクセス(シャント)の作成が大切になります。
 
*バスキュラーアクセスの種類別では、2008年統計では自己静脈内シャント90%、人工血管内シャント7%、動脈表在化2%、透析用カテーテル1%となっています。
血液透析を受けておられる方の97%が内シャントでの透析であることから、バスキュラーアクセスとシャントとはほぼ同意味となっています。

バスキュラーアクセス(シャント)の種類

1 自己血管による動脈シャント(arterio-venous fistula : AVF)

動脈と静脈を直接つなげ、動脈の血流を直接皮静脈になします。
皮静脈を穿刺(せんし)して血液を取り出します。
作成部位は、手関節、前腕中部、肘部できるだけ遠位(=遠い部分)で作成します。感染に伴う合併症を引き起こさすリスクが低くバスキュラーアクセスのうち9割はAVFが占めています。

2 人工血管による同静脈シャント(arterio-venous graft : AVG)

人工血管内シャントとは、自分自身の血管で吻合(うんごう)が不可能な場合に、
人工血管を用いて動脈と静脈を吻合するものです。
自己血管内にシャント感染症を引き起こすリスク

3 表在化動脈

AVFやAVGの作成が困難な場合や 、心不全傾向にある患者さまに対して、表在化手術を行うことがあります。
上腕動脈は本来筋膜の下を通っていますが、穿刺が困難です。そこで、上腕動脈を遊離して皮下に移動させて バスキュラーアクセスとして穿刺できるようにする方法です。厳密にいうとシャントとは言えません。

4 長期留置カテーテル

AVF,AVGが困難な時に、表在化動脈を行うか長期留置カテーテルという選択になります。
内頸静脈から上大静脈にカテーテルを挿入して、皮下トンネルを経由して前胸部にコネクターを露出させます。
長期臥床(がしょう)の患者さまや上肢の拘縮がある患者さまに適しています。カテーテルを接続するだけで
透析が可能であることから、穿刺の苦痛は少ないと言えます。

シャントトラブルについて

シャントトラブルについて

シャント狭窄・閉塞

狭窄の位置によって脱血不良や静脈圧高値、止血困難などの原因となる。
バルーンカテーテルによる拡張術を行う治療が一般的。

シャント瘤(りゅう

狭窄によって行き場を失った血液が血管内に溜まり、静脈圧が高まることで血管を広げ瘤(こぶ)が出来ます。
脈拍を強く感じたり、瘤の部分は皮膚に薄い光沢が出ることがあり、破裂のリスクがあります。
瘤ができる場所は動脈性であるため大量の出血を起こし、命のかかわるリスクを伴うため迅速な対応が必要です。

感染

多くは人工血管に生じる合併症です。血流感染であるため敗血症に至ることが多く命に関わるリスクを伴います。
表在化動脈が頻回穿刺(=常に行われる穿刺)で感染することもあります。
速やかに人工血管の抜去抗生物質治療が必要です。

スチール症候群

動脈の血流がシャントに多く流れすぎてしまうと、末梢動脈の血流が低下します。
指先の冷感、疼痛(とうつう)、症状が重い場合は壊死(えし)を生じます。
血流を減らす手術を行うか、シャントを作り直す手術を行うことが必要です。

担当医紹介

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河村博

プロフィール

昭和53年 7月 1日 日本大学医学部助手
昭和53年12月 1日 日本大学医学部講師
昭和56年 2月 1日 日本大学医学部外来医長
昭和58年10月 1日 日本大学医学部付属看護専門学校兼担講師
昭和58年 4月 1日 日本大学医学部講師(専任扱)
平成 2年12月 1日 日本大学医学部専任講師